news

2025/07/30 15:52

財務省や自民党に関する話題で、
悲しい気持ちになるニュースも多いですが、
今日は少し心温まるお話をお届けします。

 

ある消防士が火災現場で一人の命を救いました。
炎が迫る中で助け出されたその方は、ろうあ者でした。

 

~~~~

 

五年前の冬の朝。

出動指令の無線が車内に響き、
私たち消防隊は病院火災の現場へ走った。

空気は乾ききり、到着したときには
二階の窓から黄炎が噴き上がっていた。

一階を仲間に託し、私は先輩と階段を駆け上がる。

二階廊下は赤黒い煙で視界が五メートルも無い。

「西を頼む!」と叫ぶ先輩の背中が熱気で揺れ、
私は東病棟へ踏み込んだ。

点検ランプを頼りに病室を次々にのぞく。

最後の個室で、白いベッドに女の人が倒れているのが見えた。

呼びかけても返事は無い。

鼓動と呼吸を確かめ、私は抱き上げて廊下を引き返した。

背中に伝わる体温と、無防備に垂れた髪の焦げた匂い――。

「生きていてくれ」と祈りながら階段を駆け降りた。

数日後。

助け出した彼女が気になり、
当務明けに花と果物を持って病室を訪ねた。

ベッドでお辞儀をする彼女は、驚くほど可憐だった。

「お身体は…」

声を掛けると、彼女は小首を傾げ、

看護師が差し出したメモパッドにすらすらと書く。

「ありがとうございます もう大丈夫です」

瞬きの奥で笑う瞳――

彼女がろうあ者だと知るのに時間は要らなかった。

筆談は不思議だ。

沈黙のはずなのに、言葉が紙の上で跳ね、心が直接響き合う。

読書が好き、甘い物が苦手、だけどミルクティーは大好き――。

一時間が十分ほどに感じた。

別れ際、彼女はいたずらっぽく真顔になり、ペンを走らせた。

「もし、よかったら…また来てくれますか?」

私は大きく頷き、医療用マスクの裏で笑っていた。

それからの二カ月。

非番のたびに病院へ通い、
私は手話と甘いミルクティーの銘柄に詳しくなった。

気づけば、現場の炎より彼女の笑顔が胸を熱くする。

ある晴れた午後。

「伝えたいことがある」

そう書いた紙を差し出すまで、
手が震えて戸を開けられなかった。

冬陽が白いシーツに溶け、
活字の森にいた彼女を金色に縁取る。

言葉にできず、私は拙い手話で胸を指さし、
彼女を指さし、また胸を叩いた。

彼女は瞬きを早め、ゆっくりとメモに鉛筆を置く。

 

「わたし 耳きこえないよ? 一緒にいたら…たいへんだよ?」

 

筆圧が弱く、字が揺れていた。

私は深呼吸し、一行だけ返した。

 

「君の静けさごと抱きしめたい ずっと隣にいてほしい」

 

涙で文字が滲む彼女は、それでも笑顔を崩さず大きく○を描いた。

交際が始まると、彼女は意外な一面を次々に見せた。

稲光が鳴ると小動物のように背中へ潜り込み、
茄子を見ると子どものように顔をしかめる。

撫でるとくすぐったそうに肩を竦め、
もっと撫でてと手話で催促する。

私は救急救助の講習より早く、彼女の“安心のツボ”を覚えた。

付き合って二年。

能代の海に日の出が映った朝、
私はダイヤも台詞も無いまま膝をつき、掌で手話を描いた。

 

【結婚してください】

 

彼女は真冬の潮風で頬を染め、小さく頷くと両手で私の手を包んだ。

指先がかじかんでいても、心臓は真夏の温度だった。

いま、結婚して三年目。

出動ベルが鳴るとき、玄関で手話と笑顔で送り出してくれる妻がいる。

「帰ったらハグの追加料金を払ってね」

決まり文句を背に、防火服のジッパーを上げる。

死と隣り合わせの現場でも、あの静かな励ましが胸の奥で燃えている。

だから今日も全力で炎に挑める。

そろそろ非番が終わる。

今夜も抱きしめて、手のひらで「愛してる」を伝えに帰ろう

 

~~~~~

いいですね~ 


ボクもこんな男に結婚してくれたいくこさんに
ずっと感謝しています

8800円以上で 全国送料無料!

Search商品検索

Categoryカテゴリー

Guideご利用ガイド

Mailメルマガ

当店からメールマガジンをお届けいたします。
はじめまして✨ 『河村武明』『たけ』ってこんなヤツです。名刺代わりに京都産業大学が作ってくれたドキュメンタリームービーをご覧ください